インタビュー

vol.8

LiSAさん(タイアップアーティスト)

今回は、新作CMのテーマソングを作詞・作曲、そして歌唱を担当したLiSAさんにお話を伺います。「資料を100回以上は見てふくらませていった」と裏話を明かしてくれたLiSAさん。その思いに触れながら、ともに作曲をした堀江晶太さんとの制作エピソード、さらには彼女のヴォーカリストや人物としての魅力をうかがい知る一時となりました。

「出会いと別れ」の彼女たちへ、LiSAが今、何を歌っていたいか

LiSAさん(以下、LiSA):「まぁるいしあわせ」って、いい言葉だなって思うんです。


──幸せに形をつけるって、面白いですよね。


LiSA:丸とか円とか、「ぐるぐるめぐる」みたいなワードが構想のメモからもたくさん出てきました。紙にも書き留めたし、パソコンでメモ帳を何枚も開いて、今回の映像から「自分が何をいちばん感じ取るかな」って思うところをとにかく書きましたね。歌詞にならなくても、そういうことを歌えたらいいなって。


──企画書をご覧になったとき、どんな感想を抱きましたか。


LiSA:私の『いつかの手紙』がイメージとしてピッタリなんだと、お話をもらいました。たしかにそれがすっごく合っていて、「新しく書けることはないんじゃないかな?」って正直思ったくらい(笑)。


でも、作詞や曲作りのために、絵コンテや台本、それから映像を見ていくうちに、『いつかの手紙』のイメージも、(テレビCMの主人公である)まりさんも、自分の周りにいる人や、本当に同年代の女の子たちに近いと感じて。


──どんなところに?


LiSA:この年頃って、夢を追いかけていたり、自分の場所でがんばっていたりする姿を横目に「自分はこれでいいのかな……?」って思うような年齢なんです。それこそ「今度結婚するよ」なんて耳にしたり。


そんなところも私が友達から聞いている日常と似ていました。私が歌う曲にも「こういう日常を生きている人たちに届けられたら」と思っていることがたくさんあるんです。


──今回のCMとも通じる、彼女たちの背中を押すようなメッセージ性とつながったんですね。


LiSA:それで、これまでの「まぁるいしあわせ」や「小さな幸せを見つける」といったテーマは引き続きある中で、私なりに今回のグッとくる大事なことを考えました。「終わりと始まり」や「出会いと別れ」……そういうポイントから「ハロー(Hello)」と「グッバイ(Good bye)」の言葉が浮かび、それが「グッデイ(Good day)」につながっていくということを、ちゃんと表現したいと思いました。


──曲作りもサビに置いた「ハローハローグッバイ」のフレーズから膨らませていったんでしょうか。


LiSA:サビからですね。そこから何を歌いたいか。「ハローハローグッバイ」の言葉の意味である「出会いと別れ」を感じる人たちは、どんなことを歌ってほしいのか。その人たちを前に、LiSAが今、ここで、何を歌っていたいか。どういう人に向けて、歌いたいのか。そんなことを考えました。


──今回は言葉選びもストレートな印象を受けましたが、意識したことはありますか?


LiSA:やっぱり映像と一緒だから、心にスッと入っていくようにしたかったんです。それでみんなが共感できたり、同じ経験を思ったりして、「あぁ、わかるなぁ」って感じられることがひとつでもあるといいなって意識しましたね。


──サビはもちろんのこと、聴きどころや気に入っているポイントも知りたいです。


LiSA:私、今回はBメロの「こんなに 涙 流れちゃうのは/大切だった 証拠だって わかってるよ わかってるよ」がとっても好きで。


そしたら、曲を書いた後に監督さんから「そこでキャラクターが涙を流す映像を合わせたいので、イントロを長くできますか」って聞かれて。私の曲もすごく大事にして作ってくれるんだな、私と同じ気持ちでこの曲を聴いてくれたんだなって嬉しかったですね。


そもそも最初に丸井さんから「このCMで何を伝えたいのか」を教えてもらって、それなら自分はどういう風に伝えたら、よりそのメッセージと共に受け取ってもらえる楽曲になるかなって考えてたんです。


自分がグッとくるポイントと、作っていただく方々の気持ちが一緒になって、みんなが同じゴールを見て作れたのが、やっぱり素晴らしかったなと思います。



私にしか歌えないバラードを

──今回は作曲が堀江晶太さんとの共作ですね。


LiSA:いままでアレンジで関わってもらったことはあったけど、作曲としては晶太くんは初めてじゃないかな。


──初めてだと難しいこともありました?


LiSA:いや、それがですね、今回は異例な作り方で。スタジオに集まって「こういう感じだよね」なんて言いながら晶太くんが弾いてくれるコードを私が歌って、メロディを調整していくっていう。「ここから明るい系と暗い系のどっちにいこうか?」なんて言って、ふたりで分析しながら作り上げていったんです。


──まるで楽器のセッションですね。


LiSA:そうです、バンドみたい。晶太くんは私の言葉を音にしてくれる人でした。メロディを作るときも映像を見ながら、「自分がそこで何を歌っていたいか」とか「どのメロディが曲のキモになるのか」を何度も振り返っては取り入れました。


──曲調でいえば、LiSAさんにとっては珍しいといえるであろうバラードです。LiSAさんにとって、バラードはどういう存在だったり、位置づけにあるんでしょう。


LiSA:好きか嫌いかって意味なら、すごく好きです。でも、私よりも「違う人が歌ったほうが良いんだろうな」って思っていたもののひとつです。


私は「鋭さ」や「スピード感」が一番の武器だし、声が明るいので、本当は絶望を歌いたくてもどこか明るくなっちゃう。


──なんなら希望になっちゃう。


LiSA:そう(笑)。例えば中島みゆきさんの曲を歌ったとしても、ぜったいに中島みゆきさんにならないんです。


楽器でたとえるとソプラノ系で、アルトやテナーの声を出そうと頑張っても、本物であるこの人たちには敵わない。でも、活動を続けてきた中で、「私にしか歌えないバラードもあるな」とも思えてきて。


──どんな時ですか。


LiSA:んー……『シルシ』を歌ったときかな。実は、仮歌ではちょっとしゃがれたテナーな感じの、かっこいい女性の曲が似合う方が歌ってくれていて、そのバージョンの『シルシ』はもっとエモいんです。でも、私が歌うと、やっぱりちょっと明るい。さっきの言葉を借りるなら歌から希望が出てくる。


──同じ曲でも歌う人によって印象が変わるんだと、歌いながら気付いたんですね。


LiSA:そうです。しかも、私の声って同じキーでも他の人と比べて高く聞こえるんです。どうしても世界が明るくなっちゃうからこそ、今回みたいな背中を押す応援歌とか、前向きに生きるというテーマの歌がすごく合う。


この私のソプラノの声で、逆に暗い曲を歌うからこそ、ちょっとの希望が見いだせるとか、あるいは少年っぽさが増すとか、それも私の特徴なんだなって受け入れられて。だからこそ、悲しい曲を歌っても悲しくなりすぎないし、今回の曲はちょっと切ないメロディでもいいのかなって思いながら作りました。



「今日もいい日だっ」とシンクロするCMのメッセージ

──今回は「出会いや別れ」がテーマのひとつですが、LiSAさんご自身の思い出にも共通するところはありましたか。


LiSA:いっぱいありますね。私が「歌うぞ!」って決めたのは高校を卒業した後の20歳くらいだったし、それまではバイトして、バンドやって、上京するために100万円を貯めて……でも、周りのみんなはそれぞれ夢があって、それに向かってまっすぐ歩いていた。


その頃の私は、CMでいうとまりさん側だったんです。夢を追っかけて電車に乗る友達をたくさん見送ったし、それこそ家族が亡くなるという経験もありましたし。


──なるほど、まさにストーリーと通ずるところもあって。


LiSA:それからテーマでいえば、私は毎日の生きるテーマとして「今日もいい日だっ」という言葉を掲げていて、それはCMのメッセージとも通ずる「小さな幸せを見つけよう」って意味なんです。日々に落ちている良いことを探しながら、毎日に花丸をつけて、「毎日がいい日だっ」と言っていこうと。


私の「今日もいい日だっ」と、丸井さんの「まぁるいしあわせ」は、すごく近いものを感じます。生き方や、伝えたいことの目線が一緒だなって思いました。


──そのテーマ性がリンクして、楽曲にも表れてきたのかもしれませんね。小さな幸せを見つけ続けるLiSAさんにとって、逆に「大きな幸せ」を感じるのはどんな時ですか。


LiSA:そうだなぁ……シンガーとして生きていることでしか経験できないこと、かな。たくさんの人が仲間でいてくれるとか、アリーナでライブをするとか。すごくプレッシャーもあるけど、その分だけすごく幸せだなとも思います。


──以前に違うインタビューで、アリーナライブのあとで「1人対1万6千人」の関係で歌えることは「まるで魔法だ」とおっしゃっていました。あの瞬間、LiSAさんはどんな感情に包まれているんでしょう。


LiSA:世界に私たちしかいない気持ちになる。


──すごい。外の世界がなくなっちゃうんですね。


LiSA:そうですね。でも、1対1で幸せを感じるときもそうじゃない? 誕生日に好きな人が目の前にいて祝ってくれたら、窓の外がめっちゃ嵐でもそんなに気にならないというか。あとは映画館にいる感じと似てるかも。映画も、私たちだけ異空間にいる感覚じゃないですか。


──たしかに見ている側は世界観に入る感じになります。「この世界に私とあなたしかいない」という状況は、ファンの側からも感じていることかもしれません。


LiSA:そう言われると、デートしているときに二人きりで話しているのも近いのかな。目の前でスマホとか触られると、ちょっとムカつくのもそのせいだと思うんだよね。「今、世界はここじゃん!ゲームは一人の時にしてよ!」って(笑)。


──みなさん気を付けましょう(笑)。

心のジュークボックスからのCDを、まりさんへ手紙を添えて

──話はすこし戻りますが、声質の特徴もあるとは思いながら、「応援する」とか「声をかけてあげる」というのは、LiSAさんにとっても原動力のひとつなんでしょうか。


LiSA:「応援する」までいくと、ちょっと暑苦しすぎるかな……私は音楽を聴いていて、ふとしたときに「音楽に答えを見つける」みたいなことがあるんです。それを私から一つでも手渡したいのかも。


自分が何かを考えたり感じたりしたときに、ある音楽のフレーズが浮かんできて、実際にその曲を聴くと「こういう考え方があった!」とか「今の自分とすごく似てるぞ」とか……「あぁ、ここに答えがあったんだな」みたいに思えることがあって。


だから、思い出のCDが自分の心のラックにいっぱい入っていて、その時に合う音楽がウィーン……って出てきて、再生される感じ。


──まるで人間ジュークボックスのごとく。ちなみに、何か一曲、教えてくれませんか?


LiSA:えぇっ?!……たとえば、椎名林檎さんの『幸福論』。曲の最後が「幸福なんです」で終わるんですけど、あぁ、幸福のためには人のせいにしたり、自分の運を恨んだりしてはいけないんだなっていう、それこそ「小さな幸せ見つけ」に通ずることですよね。いい歌だとこれまでも好きでいたけれど、このことを歌っていたんだ!って思えるときがあったんです。


──今回のLiSAさんがつくった曲だと、どんなところがポイントになりそうでしょうか。


LiSA:この曲を作ったときに、私はまりさんの気持ちで歌ったんです。自分はあのとき、なんて言ってほしかったんだろうって。


それなら、まりさんみたいな人に、私からのお手紙と一緒に私のジュークボックスから1枚のCDをプレゼントしようと思って、この曲が出来たんですよね。「肯定してあげたい」っていうか。だから……うん、やっぱりBメロかな。


──フル版とCM用では、歌詞の一部が異なるんですね。


LiSA:CMでは、サビの「マイシスター(My sistar)」を「マイディア(My Dear)」に変えてもらっています。曲作りをしているときは、私は本当にまりさんに向かって歌っていたから「シスター」だったんですけど、CMではより広い人がイメージできるように。


実は、それこそ、今度地元の友達が結婚するんですよ。高校1年生からずっと一緒で、地元に帰ると必ず遊びに来てくれた子で。そんな彼女は夫の転勤もあって地元を離れることになったんですね。


私は地元から出てきた立場だったから、帰ると彼女が必ずいた。でも、いなくなっちゃう。彼女のことは嬉しいけれど、悲しい気持ちもあって、私は「おめでとう」しか言えなかった……だから、これは自分自身にも歌う歌なんです。


──このDearにはLiSAさんご自身も含まれているんですね。


LiSA:そうです、そうです。離れてしまう、いなくなってしまう誰かに。そして、変わろうとする自分自身に。フル版は今度リリースするベストアルバムに収録するので、合わせて楽しみにしてもらえたら嬉しいですね。


──CM版はもちろんのこと、2番、3番とつながっている歌ですからね。歌詞にも仕掛けをつくるとは、さすが「ワクワクを作る天才」ですね。


LiSA:やったー、やったー。


──ちなみに、LiSAさんといえば「ワクワクを作る天才」ですが、これは天才的だったなって思えるワクワクを、よければ教えてください!


LiSA:うーん、毎回思ってるからなぁ。ライブなり、CDなり。今回の歌詞なら「わかってるよ わかってるよ」って2回続けるところにも、ちゃんと意味があって。


あと、自分が意図的にやっていることを、誰かにわかってもらうとめっちゃ嬉しいですね。たとえば、『ROCK-mode』って曲なら、最後は「さあ 次はなんの曲」って終わるんですけど、それみたいに「次の曲は何がくるか」とワクワクできるような言葉を歌詞の最後につけてみたり。


『LOVER“S”MiLE』から『say my nameの片想い』に言葉がつながっていくように、共通のワードをいれておくとか。そうやって仕掛けたものを、誰かが紐解いてくれるとすごく嬉しいです。


──実は、ライブでも楽曲でもたくさんの仕掛けがあるんですね。


LiSA:タイトルとか映像とか、いろんなものに。意味があった方が楽しいじゃないですか。もちろん、誰かが意味を勝手に見出してくれるのも嬉しいです。


──今回の曲にもワクワクが見つかる部分があるでしょうし、たくさんの人の思いが重なったメッセージも届くはずですね。今日はありがとうございました。



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