インタビュー

vol.4

櫻井孝宏さん(オイさん役)

『猫がくれたまぁるいしあわせ』に携わる方々へインタビュー!
今回は、それぞれの話の中で毎回主人公の平倉まりに寄り添い、“ニャア”と味のある存在感を醸し出している猫のオイさんについて、声優の櫻井孝宏さんにお話を伺いました。猫という生き物をあえて人間が演じることへのこだわりはもちろん、今回のCMシリーズがテーマにしている「ちいさなしあわせ」についても、櫻井さん独自の観点で語っていただいています。

オイさんを演じるのは声優という仕事だからこそ

——今回のCMシリーズ「猫がくれたまぁるいしあわせ」ですが、猫のオイさんを演じてみていかがでしたか?

櫻井孝宏(以下、櫻井):あっという間の収録でした。なにぶん猫なので(笑)。

——セリフがなく、鳴き声だけというお仕事は、やはり特殊なものでしたか?

櫻井:人間が猫の役をやるというのは、声優ならではの仕事なのかなと思います。これまでも動物の声は経験がありますが、アニメーションではなくCMでやるのは初めてだったので、新鮮さはありましたね。

——特にどのあたりに新鮮さを感じましたか?

櫻井:まずアフレコがひとりだったというのもありますけど、30分のアニメーションと違ってCMは時間が短いので、伝えたいことや見せたいものへのアプローチの仕方に差を感じましたね。監督からも事前にいろんなお話があったんですけども、たったひとつの鳴き声にかなりの物語が凝縮されているというか。

——全4話、それぞれの鳴き声にいろんな意味が隠されている?

櫻井:そうですね。それぞれのストーリーの中で、オイさんが果たしている役割というものを、監督からはすごく熱っぽく説明されました。
第1話なんて、鳴き声どころかあくびじゃないですか。もはや“息”なんですけども、ここに感情や物語の伏線を込めるというのは、セリフがあったほうがよっぽど安心するというか、難しさを感じる部分ですよね。アフレコ現場では何度も監督にお伺いを立てながら、微妙なニュアンスの“正解”を探っていきました。



——結果的に、オイさんの演技でポイントになったところは?

櫻井:猫ののんびりした感じを失わないということでしょうか。猫って、基本ダラダラしてるじゃないですか。だいたい寝てるし(笑)。人間はそれを見て癒されるじゃないですけど、まったりとした幸せを感じていると思うんですよね。特にオイさんは猫の中でもふてぶてしいタイプ。あの面構えがひっくり返って可愛いと感じてもらえるようなニュアンスを意識しましたね。

——櫻井さんは、実際の猫とは接点があったのでしょうか?

櫻井:子どもの頃から祖父が飼っていましたし、今はいないけど僕も飼っていたことがあって、比較的身近な存在だったんですよ。猫って、家の中のどこにでもついてくるというか、距離がすごく近い生き物じゃないですか。トイレに入ると外から扉をガリガリして「俺も入れろ」とか、ああいう行動はほっこりしますよね。おそらく飼い主を下に見ていて、エサ係くらいにしか思ってないんですけど、そこが小憎らしくて逆に可愛いんです。

——ふと気がついたらそばにいる。猫ってそんなところがありますよね。

櫻井:それをいいふうに捉えて物語にするのは人間の勝手で、猫は気ままに動いているだけなのかもしれない。このあたりが、猫という生き物の面白さなんじゃないかと思うんですよね。
だから今回のCMシリーズでも、監督のおっしゃるオイさんの役割というものは理解しつつ、それでも「たまたまなのでは?」と思えるような余地をあえて残すことがユーモアなのかなとは思っていました。

——音声的な意味で、“猫の声”を演じるポイントはありましたか?

櫻井:音声として限りなく猫に近づけるのなら、それは実際の猫の声を録音してSEとして使えばいいわけで、やはり最初に言ったとおり、声優として人間がやることの意味は出したいな、というところが一番のこだわりでした。
でも、これを意識しすぎるとどうしても“ニャア感”が出てしまうんですよ。そうすると途端にアニメアニメしてしまうというか、ファンタジーになってしまって、リアルな猫の何を考えているのかわからない部分が失われてしまうんですよね。



だから第1話のあくびは特に難しかったです。“ニャア”ですらない猫の鳴き声を、わざとらしく聞こえないようにするにはどうしたらいいか。何度もテイクを重ねて監督とも話し合いましたね。油断すると、おじさんのうめき声みたいになってしまって(笑)。

——人間が動物を演じることの難しさですね。

櫻井:夢はありますけど、考えすぎるとドツボにはまる可能性もありますね。ある程度は人間側に振ったほうがいいんじゃないかというのが、今回やってみての感想です。

30歳は若くもあり大人でもある世代だからこそ応援したい

——さて、今回のCMシリーズは「ちいさなしあわせ」をテーマに30歳の女性を描いたものですが、櫻井さんの目にはどう映りましたか?

櫻井:僕は好感を持ちました。30歳って、ある意味若くもあり大人でもある世代。その中でああいう女性らしい可愛らしさを見せられると、応援したくなりますよね。

——確かに30歳は仕事の世界ではまだまだ中堅の入り口でありながら、人生においては折り返し地点をそろそろ意識する時期でもありますね。

櫻井:そこが男性の目を曇らせるところなんですよ(笑)。例えば20歳から仕事を始めたとすると、30歳はキャリア10年なんですよね。それってまだまだ「さあ、これからステップアップしていくぞ」という時期じゃないですか。でも一方で、僕が言うと怒られることかもしれないですが、“結婚”や“出産”といった人生のステージについても思うところがあったりするわけで。このあたりはなんだか、今っぽいテーマなのかなと感じます。

——今の“30歳像”について、思うところがありますか?

櫻井:なんとなく、無意識のうちに疲れているような人が多い気がします。小さい頃から不況だなんだと言われ続けて育ってきて、自覚のないストレスがいっぱい溜まって、自分でも疲れていることに気がついていない世代なのかなと。だからこそ「ちいさなしあわせ」に大きく感動するというか、日常のちょっとした喜びを大切にしているのではないかと。でも、僕らもバブルが崩壊して、そのときの夢のある話を神話のように聞かされながら育った世代なので、その気持ちはよくわかるんですよ。
大きな幸せは人それぞれですけど、「ちいさなしあわせ」って、意外と万人に共通するものなんです。だからこのCMには、30歳じゃなくても「あ、わかる」と共感できる普遍性があると思います。

——今回のアニメCMの中で個人的にお気に入りのエピソードはありますか?

櫻井:第2話の「気になるパン屋の店員が既婚者だった」ですね。展開が早い(笑)。ドラマだと3話くらいかけることを秒単位で見せているところに驚きました。そのあとに、河原でちょっとハッピーな展開が待ってるじゃないですか。結末はご想像にお任せしますという流れなんですが、その起承転結の“起・承・転”までのスピード感がすごいなと。

——ストーリーが凝縮されているという点では、第4話の実家でのエピソードにも、30代が直面しそうな様々な情報が詰まっていましたね。

櫻井:第1〜3話で主人公の人となりが見えてきたからこそ、第4話の家族編のような話がメッセージ性を持つんでしょうね。30代になれば、親の幸せや人生のことについても考えるもの。この主人公は父をすでに亡くしていますが、20代の頃には考えてもいなかった親の先々について、30代になってなんとなく準備とか覚悟というものを自分の心の隅に置くようになったというのは、リアルに響いてくるところですよね。

「ちいさなしあわせ」は経験の積み重ねの中で見つかっていく

——今回のテーマは「ちいさなしあわせ」ですが、櫻井さんはどのようなときに「ちいさなしあわせ」を感じますか?

櫻井:「幸せ」と聞くと大げさに思えるかもしれないけど、ほっとする瞬間とかリラックスできる時間とか、「幸せ」という言葉に置き換えられることならたくさんあって。仕事の合間の1時間だけコーヒーが飲める時間とか、そういうものが案外貴重だったりするんですよね。僕はふらりと買い物に行ったり、ちょっとだけ長めにお風呂に入れたときにも幸せを感じるタイプで、それは他人から見るとなんてことないかもしれないけど、自分の中ではちゃんと意味のあるアクションになっているんですよ。

——近年はSNSなどもあって、“見栄えのする幸せ”が重視されている風潮があります。

櫻井:何か特別な趣味でもあれば話は違いますが、そうではない人も多いわけで。別にひとりでもいいので、自分しか知らない自分だけの良い時間というものを作っていけたらいいですよね。

——無理をしてはいけないと思いますか?

櫻井:そうですね。それだと疲れちゃいます。例えばランニングとか自転車とか、流行りのものってあるじゃないですか。すごく楽しそうなんですけど、僕の場合は自分の性格を考えると、先が見えてきちゃうんですよね。買う、乗る。楽しい。でも途中で疑問が生まれてきて……これだったらコーヒー1杯でもいいかなって思っちゃう(笑)。あんまり似合わないことをしないのが大切ですよ。
けど、これは若い頃にいろいろやったから思えることで、10代や20代のうちにいろんな経験をしておいて、30歳を過ぎる頃には少しずつ自分らしさが見えてくるというのが理想なんでしょうね。

——殺気立っていると猫も近づいてこない気もしますね。

櫻井:ギラギラしすぎるとそうかもしれません(笑)。僕は何もやらない時間も素敵だと思いますよ。ちょっと時間が空いたらジムに行くんじゃなくて、なんかダラーっと家で過ごすのもすごく贅沢な時間じゃないですか。

——では最後に、今回のアニメCMを見ている若者にアドバイスをお願いします!

櫻井:どうしたって説教くさくなりますが(苦笑)、さっきも言ったとおり、若いうちになんでもチャレンジしておくのはひとつの手なのかなと思いますね。スポーツ系でもカルチャー系でもなんでもいいんです。その中で自分のことを理解していって、何かしら蓄えになるようなことになれば、後々の人生で得するんじゃないかと。

——将来の自分のためになるということでしょうか?

櫻井:そう言っちゃうと、とたんに腰が重くなってしまうので、もっと単純な話でいいと思います。今興味あることを素直にやってみるのがいいんです。そうすると好き嫌いが見えてくるし、結果的にやめてしまったことでも後々その経験がいい熟成をして、パワーになる可能性だってあるわけで。40代になると、否応なしに「あのときの経験が……」と結果論で物事を考える機会が増えるわけですから、後々の人生の伏線になるようなきっかけづくりは、ぜひ10〜30代のうちにたくさんやっておいてほしいなと思います。今の年齢だからできる経験と、今の年齢だからこそ生まれる自分の感覚を大切にしていけば、きっと「ちいさなしあわせ」もその先の幸せも、手に入れられるんじゃないかと思います。

——考え方を変えると、思いきっていろいろと行動できそうな気がしますね。本日はお時間をいただき、ありがとうございました!

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