インタビュー

vol.4

森倉円さん(イラスト)

『猫がくれたまぁるいしあわせ』に携わる方々へインタビュー!

今回は、アニメーションのキャラクター原案を描いた森倉円さんが登場です。自身初となる原案の制作を経た感想をはじめ、アイデアの源を生む日常の習慣、育児とイラストレーターを並行している森倉さんのライフスタイルについてもお話をうかがいました。さらに、貴重なまりさんの設定資料も見せていただきました!インタビューとあわせて、どうぞ。

リップやネイルカラーまで…作画の細やかさに驚きました!

──森倉さんにとってはアニメのキャラクター原案を描いた初めての機会となりましたが、普段のイラストやゲームのキャラクターデザインと意識が異なる部分はありましたか?

森倉円(以下、森倉):キャラクターはシルエットやイメージカラーなどで区別が付きやすいように気を付けました。

──シルエットや髪型でイメージした実在の人物などはいらっしゃいますか?

森倉:そうですね……具体的に参考にした方はいないのですが、例えば「まりさんは可愛すぎたり派手なものより、シンプルなものを選びそう」「髪もきっちりまとめるより、少しラフな感じにしそう」といったように、性格やライフスタイルを想像して身に付けるアイテムを選んでいきました。

──完成したアニメを観た感想を教えてください。

森倉:キャラクターが動いたり、声がついてしゃべったりしているのを観た時は、ただただ新鮮で感動しました。自分の絵がアニメになったらどんな感じになるのか、はじめは想像しづらかったんです。でも、作画の方がとても細部まで再現してくださっていて驚きました。

──どのようなシーンで細部の再現性を感じましたか?

森倉:まつげの目頭や目尻に入れたグラデーションや、唇に乗せたリップの色、それから爪に描かれたネイルカラーにいたるまで、ですね。私自身もイラストではそういった点まで描くことが多いのですが、作画の方にも細かいところまで見ていただいていることに感激しました。

──イラストレーターである森倉さんの視点から見て、アニメの作画で「ここまで描くのか!」と驚いた箇所はありましたか?

森倉:猫のオイさんがあくびをするシーンでしょうか。オイさんは私の想像以上にリアルさを大切に描かれていたこともあって、短い時間でも印象に残りました。それから、お皿の上のケーキが柔らかくゆれていて、美味しそうで食べたくなりました。

年齢や雰囲気のちがいを引き出す、衣装のワザ

──今回のアニメCMでは、主人公であるまりの他にも、さまざまなキャラクターが登場します。森倉さんが特に思い入れのあるキャラクターはいますか?

森倉:どれも思い入れはありますが、特に主人公のまりさんですね。服装や表情などのパターンをいちばん多く描きましたから。
内田真礼さんの声で動くまりさんを初めて見たときは、まず「まりさんかわいい!」と思いました。デザインした時点で親しみのあるキャラクターでしたが、声がついて動き出したことで、私の手を離れて「ひとりの人間」として存在している感じが強くなって、よりいっそう好きになりました。


──まりさんに着せたい服やさせたい表情など、新たなイメージも浮かんできそうですね。

森倉:大人なデートや女子会、友人の結婚式にお呼ばれしたときのおめかしなどを考えてみたくなりました。まりさんは表情がくるくる変わるので、いろんな場面を見てみたいです。

──今回のアニメCMは「30歳の女性」「ちいさな幸せ」がテーマとなっていますが、キャラクターを制作するにあたって意識した点や参考にした体験はありますか?

森倉:主人公のまりさんが大人の女性でしたから、年齢が少し下になる後輩の美希さんと比べて落ち着いた雰囲気にしようと意識しました。普段から買い物をしたり雑誌を見たりする中で、年齢やライフスタイルによって気に入る店や選ぶアイテムが変化するのを感じていましたから、まりさんや美希さんの服装にもその感覚を取り入れて、ふたりの違いを出そう、と。

──普段の暮らしの感覚がキャラクターにも活かされているのですね。

森倉:そうですね、無意識で人間観察しているときは多いです。雑誌を読んでいるとき、街中を歩いてるとき、服を選んでいるとき……さまざまな場面で「この服だったらどういう人に似合いそうか」「どんな組み合わせや着こなしが良さそうか」といったように、着るシーンや機能性などを想像するのが楽しいんです。気がついたらいろいろ考えていますね。

育児とイラストレーターを両立させるための「優先順位」

──今回のアニメCMでは、オイさんの存在や何気ない言葉で日常の見方が変わり、まりが「ちいさなしあわせを得るストーリーが書かれています。森倉さんも同じように、見方を変えることで考え方が変わった体験はありますか?

森倉:子どもが産まれたのは大きな体験でした。出産した頃は生活リズムの変化に慣れず、ストレスを感じることもあったのですが、「そのときの状況に合わせて優先順位を変化させていいのかも」と思うようになってから、気持ちが楽になりました。

──優先順位、ですか。

森倉:イラストを制作することをとっても、以前までは「描きたいときに描く」という傾向があったんです。そうすると、イラスト制作に充てる時間が不規則になりますよね。でも、今は主に子どもを保育園に預けている時間だけに描くようにしています。

それから、なるべくはじめから余裕をもったスケジュールを立てるように変えました。子どもや家族が病気になったり、何かしらの用事が入ったりするときもあるので、時間に余裕があった方が対応しやすいですから。

──子どもが保育園にいる間だけ!と決めることで集中力も増しそうですね。

森倉:スキマ時間ができたら描くこともありますが、そうするとキリがなくなってくるので……。自分の身の回りのことやイラストに割ける時間を限定するようになった分、なるべく効率よく進めるのが目下の課題です。

──その変化も、森倉さんにとってはCMのキャッチコピーである「四角い世界をまぁるいミカタに」するために必要な転換だったのだろうと感じます。最後に、まりや美希といった女性たちに向けて、森倉さんから「20代のうちにしておくと良いと思うこと」があれば、ぜひお聞かせください。

森倉:「いま、自分がやりたいな」と思っていることは、なるべくしておくと良いかなと思います。それから、いろんなものを見たり聞いたり、本で読んだりしてたくさん吸収しておくと、広い視点で周りが見えるようになるので、興味のあるものにはどんどんチャレンジしていってほしいです。

──本を読むという話が出ましたが、おすすめの一冊があれば教えてください。

森倉:一冊に絞れませんが、幼い頃に親しんだ本を読み返してみるのも楽しいかもしれません。時間が経ってから読むと新たな発見や感動もありますから。本は「読んでみて、その時自分が感じること」が大切だと思うんです。ジャンルや年代にとらわれずたくさん読んでみて、本を通していろんな人の考えや価値観に触れてみるのがおすすめです。

自分自身も学生から社会人になったり、親の立場になったりしたことで、昔は理解できなかったことが自然と理解できたり、楽しめるようになったりしました。状況が変わって「できなくなること」もありますが、「できること」も新しく増えてきた気がします。

周りの友人やお世話になっている方などを見ていて、私も楽しく生きられるように視野をもっと広く持ちたいなぁ、と日々思っています。

──キャラクターデザインに対する発見だけでなく、生きていくうえでのヒントも手渡してもらえました。お時間をいただき、今日はありがとうございました!

『猫がくれたまぁるいしあわせ』
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